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アズレンの化学:有機化学論文から分かる応用例について解説

アズレン 化合物紹介

記事の内容

この記事では有機化合物であるアズレン (アズールレーンではありません!)の特徴や性質を説明し、構造有機化学の分野でどのような役割として用いられているか、論文から集めてきた情報をまとめて紹介していこうという内容になっております。有機化学の研究をしている大学生の情報収集ツールとして、また新たな分子設計の参考として活用いただけたらと思います。

アズレンとは

アズレンは分子式C10H10で表される非ベンゼン系芳香族炭化水素であり、ナフタレンの構造異性体でもある。ナフタレンは無色の結晶ですが、アズレンは濃青色で昇華性の結晶です。

アズレンとナフタレン
図1 アズレンとナフタレンの構造式

アズレンは5員環がシクロペンタジエニルアニオン、7員環がトロピニウムカチオンに分極した共鳴構造を持つことが知られていますが、近年の研究にではそのような分極構造の寄与はほとんどないという報告もあります1

図2 アズレンの共鳴構造

アズレンの特徴

・構造異性体のナフタレンと比べて高いHOMO準位と低いLUMO準位を有しており、可視光領域に吸収を示すことで濃青色を呈す
HOMOは奇数位に、LUMOは偶数位に分布するため置換基の位置により分子軌道の制御が可能
・アズレンはカシャ則に反する代表的な分子でS1からの発光はほとんどせず、S2からの発光を示すことが知られている
・硫酸のような強酸中では、アズレニウムカチオンとなり、S1から可視光領域に蛍光を示すようになる

アズレンを分子に組み込むと期待できること

・ナフタレン骨格の代わりに導入することで最大吸収波長が長波長化し、酸化還元されやすくなる

・酸塩基によって吸収波長のシフトや蛍光をスイッチングができる材料を作ることが出来る2

・アズレンを偶数位でつなぐとn型半導体材料となる3

・アズレンの奇数位に適当な置換基を導入するとp型半導体材料となる4

アズレン骨格を導入する難しさ

・アズレンは値段が高い→23,000円/1g (TCIでの価格)
・合成が少し大変 (ハフナーの方法で1合成1週間程度かかり収率60%程度)
・位置選択的に置換基を導入することが難しい
・芳香族性がナフタレンと比べて低く、分解しやすい

まとめ

アズレンは合成における課題はあるものの、主に有機エレクトロニクス分野において非常に興味深い性質を持っています!アズレンの新たな可能性が開かれることを是非期待したいと思います。

参考文献

1)T. Slanina et al., J. Am. Chem. Soc., 2023 145 (39), 21569-2157.
2)K. Venkatesan, J. Mater. Chem. C, 2013, 1, 7400-7408.
3)Y. Murata, et al., J. Am. Chem. Soc. 2015, 137, 50, 15656–15659.
4)H. Katagiri et al., J. Am. Chem. Soc. 2013, 135, 51, 19095–19098.

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